ももと私の14年と2ヶ月

18歳。家族との縁を切ろうと遅めの家出。の割に一年と長めに家族を傷つけた。母は『もういい。生きていればいい。あなたが何をしようがもう知りたくない。』と言っていた。だけどそんなはずもなく一年が経とうとした時にもう一度『帰っておいで』と言った。私は素直じゃないから逆に困らせてやろうとこう言った。

『犬飼ってもいいなら帰ってもいいよ』

父も母も子供の頃に犬を飼っていて亡くなった悲しみが大きかったからもう二度と生き物は飼わないと決めていた。何度も兄とお願いしたけど叶わなかった事だったからダメだというと思って意地悪で言った。ダメと言われたら逆ギレする気満々で。(本当に根性が悪い)そしたら母から意外な答えが返ってきた。

『こんな偶然あるのかな?今日公園でお母さんとあなたと犬と3人で散歩する夢見たの。これは何かお告げなのかな?犬に頼るなんてとも思うけど、犬が仲を取り持ってくれるかもしれないからお父さんに相談してみる』

これが我が家に“もも”が来ることになったきっかけでした。

私はチワワかアメリカンコッカースパニエルかトイプードルが良かったのに、母の一存でヨークシャーテリアになった。まぁ夢が叶うだけいいかと諦めた。

しばらくしてお店の人から電話がきた。「小さくて可愛い女の子が見つかりました。ただブリーダーさんの意向で足の指が6本ある子だけどいいですか?」

え、五本じゃないの?と聞くと本来6本あるらしいけど私たちが“飼う”頃には切られてしまうとか。尻尾も短く切られてしまうとか。何も知らなかった。人間のエゴで私たちが知ってる“ヨーキーの姿”があるなんて。結構衝撃的だったから“おいで”と言っても駆け寄って来ないのは尻尾を切られたトラウマがあったからなのかなとよく思ったことがあった。

実際指が6本あってもなんの支障もなく、トリマーさんに気をつけてねと一言言っておけば問題ないくらい小さな足?指?らしい。母も私も「そんなの全然気にしません」と即答。面会の日に気に入れば犬との生活が始まるし気に入らなければまた探しますと言われた。あんな可愛い子を見て気に入らないわけがない。面会当日。段ボールの中に黒い毛玉のような赤ちゃんがいた。ヨーキーは赤ちゃんの頃は真っ黒だから本当に毛玉みたいだった。なんて小さいんだ!なんて可愛いんだ!本当にこの子がうちにくるの?!なんて思いながら、すぐに小さな小さな黒い毛玉ちゃんを家に連れて帰った。環境に慣らすためにすぐに段ボールから出さずにそっと寝かせてあげてねと言われたけど、出たそうにしてたから出してみた。その途端にフローリングにおしっこをした。「犬のくせに潔癖かよ!」とみんなで笑った。名前の候補もいくつか上がってたけど母が決めた名前は嫌だし、どーしようかなぁ?なんて呼ぼうかなぁ?呼んだもん勝ちかなぁ?なんて恥ずかしくてもじもじしてたら母が黒い毛玉ちゃんを抱き抱えて、馴れ馴れしく『ももっ』と呼び捨てで呼んでいた。びっくりした。初対面なのに呼び捨て?!聞いてるこっちが恥ずかしいわ!しかも名前決定ですか?!結局名前も母の一存で“もも”に。なんてありきたりな名前なんだと反対したが母の勝ち。言ったもん勝ち。負けた。

それからももとの生活が始まった。

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私がすぐに“いい子”になるわけもなく、親の目を盗んでは悪さをしてた。ももはいつも一緒にいたから私のする事はなんでも知ってた。親は私の彼氏に会ったことなくても、ももはだいたい会ってる。ももが気に入らない男はだいたいクソヤローだった。そんなクソヤローのせいで泣いてたら映画みたいに側に寄り添ってくれる。と思って抱きしめると離せ!とけ飛ばしてくる。毎日毎日抱っこするたびに塩対応。自分から寄ってくるのは食べ物欲しい時と雷、花火が怖い時とウンチ片付けて欲しい時だけ。私を上回るツンデレ娘。私が帰ってくると玄関の前まで来て、喜ぶ私の顔を見たらダッシュでリビングに戻る。なんてやつだ!くいじもすごい。箸の音、カサカサと食べ物の袋を開ける音がしたものなら獣のような勢いで近寄って、まん丸お目目に一粒の涙を流す。これに毎度騙される。我が家はテーブルだからももには見えない。だからみんなの足に前足を乗せて立つ。いつも立つ。そのせいか胴が異様に長くなった。“小さな子”を希望してたのに大きな子になった。ヨーキーのサイズの服は胴が長くてお腹までしか丈が足りないからいつもダックスの服を着せてた。他のヨーキーを道端で見かけるたびになんでお前さんはこんなに胴が長いんだよ!とみんなでからかった。

ももは隠れんぼが大好きだからよく隠れんぼをした。賢い子だからすぐみつける。でも私の方が賢いからバスタブに隠れたら見つけられなかった。ざまーみろ!勝った!と思ったら勝手にソファーで寝てた。なんて自由なやつだ。

我が家はももが来て会話が増えた。笑顔が増えた。話したくない時、話しにくい時はももに話しかけて伝えた。それでもいくらももが我が家に来たとしても人間の喧嘩がなくなる事はない。私はももが来たって何も変わらない!と叫んだ日もあった。ある日父vs母、兄、私で大げんかをした日があった。ももはよく人間同士がふざけて叩いて「痛い!」と言うと叩いてる人に吠える。悪いやつどっかいけ!と正義感を出す。それが面白くて痛い痛い遊びをしてからかった。でもこの日は本当の喧嘩だった。ももはいつものように吠えた。怒鳴り声を出す父に向かってももは吠えた。それが余計に私たちをイライラさせた。父はももを抱きかかえ(いや、あなたが怒鳴るから吠えるんだよ)なだめようとしつつ、足で兄を蹴った。その勢いでももも振り回された。私はこの子を守る!と恐怖の中父からももを奪った。ももを抱きかかえていい子いい子しながら私の部屋に連れて行った。あれから雷と花火の時はトイレの奥か私のところに来るようになった。私は家族の中で一番下に見られてる。むしろ自分より下だと思われてたと思う。だけど、怖い事から守ってくれる人だというポジションを確保した。

それからも、もちろん喧嘩はする。人間だから。それでもやっぱり減ったと思う。もものお陰だな。でも私は幾度となく不安に襲われた。初めは『犬を飼う』という私にとっては夢のまた夢の話だったから、これは夢かもしれない。小さいからあのベランダの隙間から落ちてしまうかもしれない。ほらね、夢だったんだよ。ってなりそうで不安だった。こんな幸せ、続くわけない!だってベランダの柵よりももの方が小さいもん!そう思ったら恐怖だった。でも母は主婦のプロだからすぐに隙間を埋めるように柵を買って設置した。一安心した。すると今度は首輪からリードが外れてしまうかもしれないという不安に襲われた。この不安だけはずっと拭えなかった。だから散歩に行く前は何度も何度も入念にチェックした。よし!外れない!さ、行こう!って。そして、8歳になる頃くらいに新しい不安が私を襲った。

続く(長くなっちゃったから)

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